裁判員制度の目的

法律の制定には、順序があることを説明しました。
国民が選んだ政治家たちは、「法律を作るため」に国会に集まっているので、
どんどん新しい法律ができてしかるべきだし、自分たちの代表者なのに、反発するのもおかしいのかな、と、国民にとって政治とは、口を挟む隙のない、単純にして複雑なシステムになっております。

しかしながら、なぜ裁判員制度が必要なのかな?と思ってしまいますよね。

法律って難しいですよね。
裁判ともなると法律を駆使しなければなりません。
ちゃんと法律のことを勉強して、さらに知識を得た人が裁判官になるべきです。
なのに、なぜ一般国民を裁判官として利用する必要、価値があるのでしょうか。

裁判員制度の公的な(表向きの)理由は、
「一般国民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながること」
だそうです。
具体的には、2つのポイントになります。

(1)
国民が、今まで専門家の聖域ともいえた司法に参加することにより、市民が持つ「日常感覚」や「一般常識常識」を判決に反映させること。

(2)
そもそも密室で行われがちな裁判の内容を、もっと一般市民の理解を得、裁判の信頼性を上げること。

国の説明を信じるならば、
「法曹界は井の中の蛙だ。あなたがた一般市民の常識的見解がほしい。」
「一般市民が裁判に参加すると、公開された感じがあって、信頼性があがるだろ。」
というふうに、「国民の力が必要」だ、とラブコールしているのです。

日本のこれまでの裁判は、検察官・弁護士・裁判官の法律の専門家のみで結論が導かれるものでした。
しかし、法にのっとり、丁寧で慎重な検討は、信憑性があり、高い評価を得てきました。
国民が関与しないからといって、不便だとも、不公平だとも、信用できないとも言っていません。

なのに、ここまで、「国民の力が必要」だと強調する理由は何なのでしょう?
つまり、今までの裁判制度は、一部の知識人(裁判官)たちが「密室」によって行っており、
彼らだけの判断では、判決までの過程が「不透明」で信頼性が薄く、裁判は民意からは程遠いものであるといったところなのでしょうか?

若干、悪意のある書き方をしてしまいましたが、具体的には、いろいろな解釈が考えられます。

国民も単純でないので、
そうはいっても、諸外国の制度に合わせるんだろうとか、
派手な行政改革を行うということで、国が進歩しているという印象を与えているんだ、という意見もあります。

どんな法律でも改正や新法律の施行には、賛否両論が噴出します。
仕方のないことです。

しかも、裁判員制度の中身をちらっと聞くと、
本当に多くの人が、該当するではありませんか!
犯罪とはいえ、人の人生を左右するしてしまう裁判に、自分が参加しなければならないというのは、
好き勝手にニュースを論じているのとはまったく重要度が違い、心理的な負担が大きくなります。

事実、「密室」論が、悪意のあるものではないとしても、裁判官の判断基準は、一般的な国民感情とかけ離れてきていることは、指摘されています。
その根拠は、検察が起訴した犯罪者の実に99%が有罪判決を受けているという数字にもあらわれています。
裁判員の導入は、「冤罪を無くす」ことはもちろん、「情状酌量の判断基準」に、もう少し国民感情に委ねてもいいのではないかという理由もあるのです。
あえて専門家ではない人の意見が入ることで、国民感覚が反映され、裁判に対する国民の理解を深められることが期待されているのです。

外国には、国民が裁判に参加する制度を導入している国は多数あります。
陪審員制度や、参審制度などがあり、少しずつ国民の関与の仕方が違います。
アメリカやイギリスでは陪審員制度が一般的です。
ハリウッド映画にも、よく描かれています。

陪審員制度は、事件の事実認定と法の適用(評決)を陪審員が行います。
陪審員は、一般市民から選ばれて裁判に加わる人々で、
審議は、裁判官を加えないで行なわれます。

参審制度は、審議に一般市民が加わりますが、評議や判決は、裁判官と一緒に行われます。
フランスやドイツで行われている方法です。
日本でも始まる裁判員制度は、こちらです。

参審制度では、陪審員のことを「裁判員」といいます。

裁判「官」と裁判「員」という言葉は、似ているので、言い間違いに注意しなければなりませんね。
陪審員と呼べば、はっきり区別できていいと思うのですが…。

実は、日本でも昭和18年までは陪審員制度がとられていました。
戦時を理由に中止されたまま今日に至っています。
本当の理由は、あまり利用者がいなくて普及しなかったというところらしいのですが、
日本人気質に合わなかったといえるのかもしれません。

今回は、陪審員制度は中止のまま置いておいて、
新たな参審制度を制定しました。

裁判員制度を導入することの最大のメリットは、分かりやすく迅速な裁判の終了です。
今までの裁判は、慎重さゆえ、審議に時間がかかり、その結果も、国民には理解しがたい部分があったと言われています。


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