裁判員制度の導入されるまで

裁判員制度は、「国民を裁判に参加させよう」という制度です。
現実にするためには、法律を作らなければなりません。

そこで、
「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(さいばんいんのさんかするけいじさいばんにかんするほうりつ)」
という決まりを作りました。
長いので「裁判員法」と略されます。

この中で、国民が裁判に参加するための「仕組み」が詳しく決められています。

ところで、「法律(法)」というのは「国」が定めるものです。
家庭や学校や地域のルールは、法律とはいいません。一般的には、規則、規約ですね。

今、日本には、法律の頂点にたつ「日本国憲法」の下に、
1791種の「法律」
1800強の「政令」
3200強の「府省令」があります。

それぞれに、優劣関係があって、上位の法令が優先されます。
判断の分かれる解釈が考えられるとき、
上位の法令に反する下位の法令は、効力を持たないことになっています。

2種類の優劣関係が考えられます。

★種類による優劣関係
憲法
>
条約
>
法律
>
政令(最高裁判所規則・議院規則)
>
府令・省令・規則・庁令


★効力範囲による優劣関係
国の法令
>
条例
>
規則(教育委員会規則、公安委員会規則など)

ですから、家の方針だ!とか言って夜中に子供を連れまわしている大人は、条例違反で捕まってしまうわけです。


◆「法律」以下の数は、増えたり減ったりします。

法律は、議会の議決を経て制定されます。

そもそも「議会」というのは、「法律を制定する集会」のことで、「立法府」とも呼ばれます。
日本の場合「国会」のことです。

国会には、「国会議員」が参加します。
国会議員は、国民から選ばれた人たちです。

ですから、私たちは、自分たちが選んだ人たちに託して法律を作っていることになります。

しかし、国会議員の選出は「多数決」によるものなので、そこにはかなり組織的な事情もあり、
残念ながら、国民一人一人の意思が、国会まで届くものではありません。

また、国会で、国民のための法律作りばかりに専念していただいているか、といえば、
これまた残念ながら、政治家の不祥事の原因追究に時間が割かれていたり、立法以外の場面ばかりが目につくような気がします。

肝心の法制定は、案外、サラッとできちゃったりします。
裁判員法に関してもそうでした。
時の小泉内閣の勢いによってできた法律で、施行される今、国民がいくら不本意に感じても、すでに小泉内閣はなし…。


◆「誰に対して効力があるのか」は、法律の中に書かれています。

法律は、誰にでも効力があるわけではありません。
「誰に対して効力があるのか」は、それぞれの法律の中に書かれています。

たとえば、選挙権があるのは、日本国民なので、国籍がなければ投票することができません。
よく長く日本に住んでいる外国籍の方の参政権が問題になっていますよね。

交通ルールなどは、日本の中で起きる事件に関してはすべての人に関係します。
旅行者が交通事故を起こしても、日本のルールで裁かれるはずです。


◆裁判員制度の導入

「裁判員法」は、平成16年5月28日に制定された法律です。

前に、「法律」は、「議員」によって「国会」で制定されるものだと説明しました。
突き詰めていけば、国民の意見=法律制定と考えられなくもないのですが、
やはり、誰かが何かを言いださなければはじまりません。

「裁判員法」は、「司法制度改革審議会」が取りまとめた意見書が骨格になっています。

では、「司法制度改革審議会」は、どこからでてきた団体かというと、
「司法制度改革審議会設置法」という法律によって作られたものです。
この法律の、第一条に
 「内閣に、司法制度改革審議会(以下「審議会」という。)を置く。」
と書かれているので、「法に従って」設置されたというわけです。

では、どうして「司法制度改革審議会設置法」というと、だれかが「そろそろ司法制度を見直さなければならないだろう」と言い出したわけで……

このように、もはや法律制定の本当の出だしはどこだったのか、わからないのが実情です。

ともかく、「司法制度改革審議会」は、法令に従って、1999年7月から2001年7月までの2年間、内閣に設置されていました。

何をしなければならなかったのでしょう?

これも、法律に書かれています。

............................

「司法制度改革審議会設置法」
第二条 審議会は、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する。
2 審議会は、前項の規定により調査審議した結果に基づき、内閣に意見を述べる。

............................


訳しますと、

今の日本では、「法律」が大事ですよね。
でも、「法律」は難しい。
もっと国民にも分かりやすくて、使いやすくい司法制度にしましょう。
で、国民にも参加してもらったらいかがでしょう?
法律の世界の存在価値を理解してもらって、もっと充実させましょう。
そのために、よい意見を出し合ってくれますか?
でその結果は「内閣」に意見してくださいね。

という文章です。

ご存じでしょうが、内閣というのは「国の行政権を担当する機関」です。

ここらへんまで説明すると、
「国民、国民と言っているが、政治家が勝手に決めてるのではないか?」という政治的なニオイがプンプンしますね。
文句いっても、個人の力ではどうしようもないので、従いましょう…。


◆「司法制度改革審議会」のレポート

「司法制度改革審議会」は、法律で決められてしまったので、法律通り「内閣に意見」を述べました。
これが、「21世紀の日本を支える司法制度」というタイトルのレポートです。

内容も、きちんと法律通り「改革」を強調した提案書となっています。

全文が、首相官邸のホームページで見ることができます。
司法制度改革審議会意見書 http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/index.html#mokuji

レポートの中身を簡単に紹介します。

●大きく変えたい「裁判制度」

裁判に関わる力として、今までの裁判制度の主体であった「司法」「法曹(専門家)」とともに、
これからは「国民の力」が重要であることが強調されています。

★司法の役割とは、
すべての当事者を対等の地位に置くために、公平な第三者が適正かつ透明な手続により公正な法的ルール・原理に基づいて判断を示すこと。

★法曹の役割とは、
プロフェッションとして司法の運営に携わり、多様な社会生活関係を積極的に形成・維持し発展させること、また具体的なニーズに即した法的サービスを提供すること。

★国民の役割とは、
統治の主体であり、権利を持つ立場から、司法の運営に主体的に、有意的に参加し、法曹とのコミュニケーションにより、国民のための司法を実現すること。

●改革を推進するための具体的目標(方針)

1・国民の期待に応える司法制度
司法制度をより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとする。

2・司法制度を支える法曹の在り方
現状の法曹界の問題点を改革し、質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保する。

3・国民的基盤の確立
国民が訴訟手続に参加する制度の導内閣入等により司法に対する国民の信頼を高める。


◆裁判員制度の根拠となる提案

レポートの具体的目標の中で3番目に掲げられた、「国民的基盤の確立」という提案が、内閣のお気に召されたようです。

もっと国民にも分かりやすくて、使いやすくい司法制度にするためには、「国民の司法参加」を決めてしまえばよいのだ!とね。

しかし、この文章って、実は、リポート内で突然でてきたものではなく、
そもそもの「司法制度改革審議会設置法(2条)」の中で、「国民の司法制度への関与」とはっきり書かれているものを、また言い直しただけのことです。

ですから、流れはだいたい分かっても、やっぱり基本のところで誰が言い出したのか、という疑問は残ってしまいます。

ともかく、成立した2004年(平成16年)5月の小泉純一郎内閣といえば、
「小泉旋風」とも呼ばれたほど、改革に積極的でした。
小泉内閣の骨格は、郵政民営化法でしたが、ペイオフの解禁、年金、医療制度などいくつもの大きな改革が行われた時代でした。
何だかよく分からないけれど大きな政治改革は、生活が良くなりそうな気がすると、国民の期待を集めていたころですね。
そういう意味で「積極的な政治」を行っているように見せていた「政治手腕」だったという見方もあるのです。

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